読了した本

『The Jane Austen Book Club』Karen Joy Fowler (著)

  • ペーパーバック: 304 p ; 出版社: Penguin Books Ltd ; ISBN: 0141020261 ; (2005/01/18)

Publishers Weekly
ペン/フォークナー賞の最終候補となった前作『Sister Noon』に続く、ファウラーの5作目となる本書は、彼女の本領であるいたずらっぽい機知、ひねりのある登場人物たち、気の利いた脱線話に彩られているものの、これまでと異なるのは、実際のブッククラブの会員などに狙いを定め、「論議のお題」を作中の登場人物たちに提示させる、というような遊び心である。


月に1度、ジェーン・オースティンの作品を議論するために集まる5人の女とひとりの謎めいた男からなるプロットは、一見単純なのだが…。マリアンとブランドン大佐の結婚話や、シャーロット・ルーカスが同性愛者か否かなど、次々となされるオースティン作品に関する議論によって浮き彫りにされてゆくのは、むしろ議論を展開する登場人物たち自身の「内なるオースティン」、つまり自分たちがどのような人間なのかということ、である。あれこれコントロールしたがる独身女性ジョセリンにとってのオースティンは、優れた恋愛仲介人であり、孤独なプリューディーにとってのオースティンは最高の皮肉屋であり、レズビアンのアレグラにとっては陰険な階級社会の擁護者にほかならない。


高カロリーのデザートをかじったり、マルガリータをすすったり、妄想の世界にはまり込んだりしながら、ブッククラブでなされる彼らの会話は、あるときは鋭く、あるいは無意味で、また露骨であったり、愉快であったりと、ころころ変わる。オースティン同様、ファウラーもまた掟破りな機知に富み、聡明な人間模様の観察者なのである。同時にファウラーはポップカルチャーのいち愛好者として、人気ドラマ『Sex and the City』やリナックスLinux)の話題、サンダンスのお祭り騒ぎなどを熱い文学談義にぶつけて台無しにしてみたりする。


21ページにもわたって費やされたオースティンの家族や友人、そして評論家などからの引用は、少々やり過ぎの感があるものの、ファウラーがその斬新な視点によって、多くのブッククラブ・メンバー、広い読者層を魅了することは間違いないだろう。
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