読了した本

『Last Chance Saloon』/Marian Keyes (著)
ペーパーバック: 528 p ; 出版社: Perennial ; ADIN:0060086246 ; (2003/05/27)

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マリアン・キースお得意の、30代シングル男女が本音でぶつかりあう恋愛小説。登場するのは、タラ、キャサリン、フィンタンの幼なじみ3人組だ。彼女たちは、屈辱だらけで思いどおりにいかない人生を、それでもなんとか生きている。それは、30代女性ならだれもが経験する思いといえよう。ただ彼女たちの場合、フツーの30代女性よりも、耐えるべきものがやや多めかもしれないが。


タラの恋人は、完全に「ヒモ」状態のトーマス。彼はダイエット中のタラをあざ笑い、どうみても若くてスリムな女の子と比べては、冷酷きわまりないコメントをするサイテー男だ。一方、キャサリンはバリバリのキャリア・ウーマンだが、プライベートは散々。これまでに、恋人にふられること計6回。しかも、そのどれもが、ゴミのように捨てられるという悲惨な結末なのだ。そのたびにキャサリンは恋愛戦線から後退、とうとうリモコン操作でしか恋愛できないようなところまで引きこもってしまう。そんななか唯一、ファッション業界人のフィンタンだけは、イタリア人の恋人サンドロとラブラブ。しかし、順調そうに見えたこのカップルに、突如として「健康危機」が襲いかかる…。


ローカン、マンディーら奇妙な友人も含め、タラ、キャサリン、フィンタンたち全員が、とにかく必死で生活し、恋愛し、なにかを学んでいく。結局、それが彼女たちの生きる道なのだ。キースは、今という時代をシングルで生きる人びとの実像に、痛々しいまでにせまっている。トータルで見れば、彼女たちの人生も捨てたものではない。屈辱的なことよりも、真の友情へのめざめなど、すてきなことの方が多いのだ。『Last Chance Saloon』は、そんな彼女たちのおかしくて、あつかましくて、ちょっとホロリとさせる物語。ゆったりした気分の休日にはもってこいの作品だ。