ロバート・R・マキャモン 『遙か南へ』

ジョナサン・フランゼンの『コレクションズ』は、翻訳でも大判で分厚い単行本なので、なかなか進まない。黒原敏行氏がゲストの12日のジュンク堂の「ブック・カフェ」には一応申し込んだのだけれど、読み終わるかどうか・・・。

といいつつ、マキャモンはさっさと読み終えた。全然違う世界だから、フランゼンと比較してどうこう言えるものではないのだが、やっぱりマキャモンは面白いので、フランゼンを読まなきゃ!と思いながらも、マキャモンに手が伸びてしまうのだ。それに、これは文庫本だし、布団の中でもお風呂の中でも読める。この違いは結構大きい。

タイトルの『遙か南へ』の「南」は、別にアメリカ南部を意味しているわけではない。『Gone South』というのが原題で、これには、気がおかしくなってしまったとか、あっちの世界へいっちゃったとか、そういった意味がある。ベトナム戦争で使われた言葉だ。

でも、話の舞台はアメリカ南部で、先日読んだ『ミステリー・ウォーク』よりも、さらに南部色の濃い作品だった。早稲田の「南部映画祭」で、毎週南部の映画を観ているので、情景が非常にリアルに思い浮かんでくるようだ。

いわゆる、黒人奴隷、綿花、サトウキビ畑、人種差別・・・といった、これまでの南部のイメージとは全然違う内容だが、サルオガセモドキ、ザディゴ、ガンボ、バイユーなどなど、どこを読んでも南部の雰囲気たっぷりの作品。


〓〓〓 BOOK

◆読了した本

『遥か南へ』/ロバート・R.マキャモン (著), 二宮 磬
文庫: 589 p ; サイズ(cm): 16
出版社: 文芸春秋 ; ISBN: 4167218615 ; (2000/01)
内容(「BOOK」データベースより)
はずみで人を殺してしまったヴェトナム帰りのダンは、余命いくばくもない身ながら逃避行に出た。道連れは顔半分に痣のある美少女に、ダンを追う三本腕の賞金稼ぎとプレスリーのそっくりさん。アウトサイダーにされてしまった者たちは、癒しを求めてひたすら南へ向かう。温もりと恐怖が混ざり合う不思議なロード・ノヴェル。