どんな性格なんですか?

「彼は金貸し相手の間抜けで肛門性格の弁護士たちの歴史において、もっとも間抜けで肛門性格の弁護士だった」
―ジェイムズ・ハイム『ロデオ・ダンス・ナイト』より


先日、マキャモンの『魔女は夜ささやく』を読み終え、まだ半分ほど(全624ページなので、半分でも300ページはある)残っていたジェイムズ・ハイムのテキサスミステリ『ロデオ・ダンス・ナイト』をやっつけてしまおうと、また読みはじめたのですが、この翻訳は下手くそだなぁと思いながらなかなか進まずにいました。

作品の内容も面白くないし、ハイムの文章自体も上手くはないのかもしれないけれど、上記の文章を見て、やっぱりこれは酷いや!と。

肛門性格ってなんですか?どんな性格なんですか?私もそれなりに読書はしていますが、こんな言葉は初めて目にしました。

幻想文学だとかナンセンスものでもない、ましてや難しい専門用語を使っている話でもないわけで、ただのミステリですよ。場所はテキサスで、大英帝国の紳士的なシャーロック・ホームズが出てくるわけでもない。

となると、原文がないから定かではないけれど、ここはおそらく“口にしてはいけないお行儀の悪い言葉”が使われているのではないかと…。察しのいい方はどんなスラングが使われているか想像に難くないと思いますが、どう考えても“肛門性格”なんていう訳はないでしょう。笑うと言うより、唖然とした上、がっかりしちゃいました。

翻訳をしていると、ドツボにはまって全体が見えなくなり、簡単な単語でもおかしな訳になってしまう場合もなきにしもあらずですが、とりあえず、これを訳しているのはプロの翻訳家なんですから、日本語としておかしいなと感じないのかしらんと思いますよ。

たぶんわけが分からなくなって直訳で仕上げてしまったのだと思いますが、翻訳家は作家よりも文章力がなければならないということを、改めて感じました。それにしてもね…おかしいのはこの部分だけじゃないし。

出版社も手抜きしたかも…分厚いですから…って、そういう問題じゃないと思いますが、こんな翻訳を出していたら、本はますます売れなくなりますよ。嘆かわしい。

ちなみに、精神学的にでも何でも“肛門性格”というものが本当にあるとしたら、訂正記事書きますよ。一番いいのは原文を確認することですが、わざわざ確認する手間をかけるほどの作品でもないので、敢えてはしませんけど。