死にものぐるい

マキャモンの『マイン』を読み終えたが、これこそまさに「死にものぐるい」という言葉がふさわしい話だろう。昨日も書いたけれど、ヴァンパイアとか異星人とか幽霊とかのホラーではなく、人間の女の怖さを描いた作品。


あえて言えば、スプラッターもの。これでもかとばかりに血が吹き出てくる。読みながら、痛たたっ!と顔をしかめながら読んでいた。それでもマキャモンの作品は、最後には読者を感動させてしまうのだからすごい。


私には子どもがいないから本気でわからないかもしれないが、子どものいる母親なら、主人公の一人ローラの気持ちは、痛いほどわかるだろう。銃で撃たれようが、犬に噛み付かれようが、骨折しようが、指をなくそうが、何としてでも子どもを守る母親のものすごさ!


子どもをさらったメアリーのほうもすごいが、こちらは気が狂っていると思えば、なるほどと納得できるけれど、正気でそれに立ち向かうローラはものすごい!女はマジで強い!そんな女を書いてしまうマキャモンは、一体どんな経験をしてきたのだろう?


マキャモンは脱ホラー宣言をして、その後断筆宣言をしたのだが、彼ならホラーでなくても十分にいい作品が書けるだろうと思う。また絶対に書いてほしい。すごく、いや、ものすごく心待ちにしているのだから。


ホラーは全くダメだった私が、ここまでホラー小説にのめりこむようになったのは、ひとえにマキャモンのせいだ。なぜなら、良くも悪くも、ホラーは人間の真の感情を描いていると気づかせてくれたからだ。そうした真の感情が、純文学のようにまどろっこしくなく、ストレートに描かれているのが気に入ったのだ。


白か黒か、○か×かという性格の私は、マキャモンの作品のように、悪はあくまでも悪であり、善はあくまでも善であるという描き方は大好きなのだ。そして必ず善が勝つのも、この世の中にあって、救われる思いがするのだ。実際の世の中では、善は必ずしも勝たないし、ホラー小説よりも恐ろしいことは多々ある。個人的には、必ず善が勝つマキャモンの小説は、むしろファンタジーであると言ってもいいかもしれないと思っている。