「暗黒の塔」&「タリスマン」

キング&ストラウブの『Black House』を読み終えた。ホラー+ダークファンタジーという内容なのだが、この二人、オタクだなって感じ。それに、同じくこの二人の共著である『タリスマン』を読んでいないと、この世界にはなかなか入り込めない。さらに、キングの「暗黒の塔」シリーズまで出てくるから、この本だけでは、ちょっと無理がある。


なぜなら、後半はほとんどそういった前作の続きといった趣で、事前に『タリスマン』や「暗黒の塔」シリーズに関連していると知らなければ、何のことやら?という感じだろう。それでも理解できなくはないが、やはりこの世界の深いところまでは入って行けない。


とはいえ、ファンタジー=わけがわからない世界というわけじゃないのだから、これをファンタジーと呼ぶのはどうかな?とも思う。ファンタジーの要素もあるが、ナンセンスものの要素もあり、そこにスプラッターと狂気が混じった世界。怖いというより気持ちが悪いという世界で、最後にはいくつもの異世界が入り混じる。


この本では、邪悪なものの正体は何なのか明らかにされてはいないのだが、前作ではちゃんと書いてあるのだろうか?それに、善なるものの世界であるかのようなテリトリーとは何?と、気持ちが悪いという思いの次には、疑問ばかりが残る。前作を知らなければ、主人公のジャック・ソーヤーの不思議な力は理解できない。私も読んでいないので、なぜソーヤーがそういう立場にいるのか、完全には理解していない。それでも、日頃ファンタジーを読んでいる経験から、そういうものなんだろうなと思えるだけである。


邪悪な存在の根源が現れていないところを見ると、この先まだ続きを書くのかもしれないが、このオタク二人には付き合いきれない。一応ジャック・ソーヤーの使命はここで終わるのだが、さらにスーパー・ジャックとなって登場する可能性もありそうだ。


驚いたことに、この本にはバーナード・マラマッドの名が登場する。マラマッドの『ナチュラル』に言及しているのだが、最初はストラウブの趣味か?と思ったが、そういえばキングは野球好きで、レッドソックスの熱狂的なファンだから、野球のことが書かれた『ナチュラル』についての記述は、キング担当かも。


ディケンズの『荒涼館』(Bleak House)と、この『Black House』の共通点については、ディケンズを読んでいないのではっきりとは言えないが、単なる「似た言葉」でしかなかったようだ。そこまで期待したのが間違い。


この本は、キングとストラウブの、小説や音楽やマンガの好みがずいぶん反映された本だと思うが、よく知られたものならいざ知らず、そうでないものに関しては、いい加減にしてくれよという感じ。とにかく、余計な記述が多すぎるので、実際の登場人物なのか、小説やマンガの中の人物なのか、それを区別するだけでも大変なのだ。逆に言えば、いくら分厚くても、ストーリーに直接関係のない、飛ばせる部分が多いので、適当に読むことができる。読んだからといって、何も残らないけれど。


ところで、「新規の顧客しか大事ではない」というAmazonでは本を買いたくないので、近頃はSkysoftやbk1を見ているが、洋書はSkysoftのほうが安いということに気づいた。消費者はもっと賢くなって、自分が有利なように、あちこち利用するべきだなと思った。同じ買うなら気持ちよく買えるところのほうがいい。