ポール・オースター 『トゥルー・ストーリーズ』

「崖の国物語」の2作目『Stormchaser』を読み終えたので、明日にでも図書館に行って、また固有名詞リストの続きを作成しようと思う。このシリーズは、どうせダメだろうという予想を裏切ってとても面白いのだが、オリジナリティあふれる作者の造語が、どんな日本語になっているのかがとても興味深い。

これを読み終えたところで、ちょろちょろと読んでいたポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』を本腰を入れて読むつもりだったのだが、ああ、また貧乏話かという感じで、ちょっとこの暗さは今の気分じゃない。

彼のエッセイといえば、ほとんど貧乏話で、オースターにはもっとストイックで高潔なイメージを持っていたのに、それを崩さないでくれ!という感じ。オースターの原点は「貧乏」にあるんだろうけど、貧乏話のついでに、「淋病をもらった」なんて話が書いてあったりすると、勝手に築き上げていた美しいイメージが、音を立てて崩れていく。

これは、けしてオースターが悪いわけではなくて、私が勝手に「オースターはストイックで高潔である」と思い込んでいただけの話だから、この本が良くないという意味ではない。『すべての美しい馬』の主人公がマット・デイモンではなく、ヴィゴ・モーテンセンだと勝手に決めつけているようなものだ。

しかし、オースター独特の「偶然」に関する話は、へええ〜!と思うし、後半には「9.11」に関するエッセイも載っているので、それに対する彼の考え方を知るには、重要な本だと思う。それに、貧乏が悪いというわけでもない。でもね・・・。

というわけで、これはしばらく中断。長編ではないので、中断していてもだいじょうぶと踏んで、本棚に戻した。