人間は勝手な生き物だ
子供の頃、私は卵が嫌いでした。卵を食べると頭が良くなると言って、祖母が毎日学校に行く前に、嫌がる私に無理矢理生卵を飲ませたからです。
結局のところ、頭が良くなる理論は証明されなかったと思いますが、もしかしたら本来はもっと馬鹿だったかもしれず、効果のほどはよく分かりません。
というわけで、食卓に玉子料理があると手をつけられず、その時には決まって、玉子を食べるまで他のものを食べてはいけないという父をどれほど憎んだことか…。
意地になってご飯も食べずにうつむいて、泣きながらじっと何時間も食卓に座っていたこともあり、そんな私などいないかのように振る舞う親兄弟を心底憎んだものです。
しかし、そんな卵嫌いもなんとか克服し、今ではむしろ好き。オムレツ、ベーコンエッグ、出汁巻き玉子、カルボナーラ…大好きです。
なのに!大人になったら、メタボだのコレステロールだの、卵は良くないから食べちゃいけませんと言われる。卵はすっかり悪者です。
だったら、なんであんなに父に怒られなきゃならなかったのか、なんであんなに涙を流してまで辛い思いをして食べなければならなかったのか、なんであんなに父を憎まなければならなかったのか、と思います。
祖母や父の考えはもちろん分かってます。戦争という悲惨で異常な事態の中で、卵は貴重なものだっただろうし、何よりの栄養源だったはず。その感覚は一生消えることはないでしょう。
しかし、生活が豊かになると、昔は命を救った食べ物も毒になる。○○は体に悪いという話を聞くたびに、人間というのは勝手なものだと思わざるを得ません。
卵が悪いわけじゃないのにね…と思います。