雪屋の気持ち
「意外に需要があるもんですよ…季節とわず、場所もとわずに…ただね、仕事が楽しいのは、やっぱり街なかでの降雪です…通りを歩くみなさんの顔が、舞いおちる雪を見たとき、ぱっと輝く。ふつうに暮らしておられるみなさんに、雪を見ていただけるのが、私はなにより嬉しいのです」
―いしいしんじ『雪屋のロッスさん』より
いしいしんじの短篇『雪屋のロッスさん』を読んでいて、ああ、この気持ちだよねと思いました。歌を歌っている時に、お客様の顔がぱっと輝く…その瞬間が私はなにより嬉しいです。
私をいまだにアマチュアだと思っている人もいるし、ちょっと進んで「プロみたい!」と言う人もいます。ちゃんとプロとして扱ってくれる人も、もちろんいます。
でも、そんなことはどうでもいいんです。メジャー志向があるわけでもないから、メジャーでなければプロとは認めないというなら、それでも全然構いません。
以前に落語の小三治師匠の事を書きましたが、師匠も「プロなんてことは意識していない。ただ夢中でやっているだけ」と言っていました。
その通りなんです。夢中で一生懸命やっているだけ。自分のためではなく、わざわざ来てくださったお客様が喜んでくれたなら、それが幸せと思ってやっているだけなんですよ。
『雪屋のロッスさん』は、そんなことをまた改めて思い起こさせてくれた話でした。
もちろん、雪を見て喜ぶ人ばかりじゃありませんから、お話の方はもっといろんな視点から語られています。よかったら是非読んでみて下さい。
「幸いなことに、雪はいずれ溶けます。はかないようですが、そこが雪のいいところです」