ソズノウスキの『大吸血時代』

デイヴィッド・ソズノウスキの『大吸血時代』を読んだ。これは個人的には最近のヒットだと思う。600ページを超える大部の書だが、その分厚さをあまり感じられないほどテンポもよく、一気に読めた。


ソズノウスキは書き込むタイプの作家だと思うが、私はそういうタイプの作家が好きだし、ユーモア感覚もマッチしていた。翻訳が金原瑞人氏なのでどうかな?と疑っていたが、ほとんどはお弟子さんが訳しているのだろうし、今回は金原節もあまり感じることなく読めた。


吸血鬼が人間の数よりも多くなった時代という設定の話だが、自分も吸血鬼で、周囲にいるのも吸血鬼ばかりなら、これはもうホラーにはならない。中身は、たまたま人間の子を拾ってしまった吸血鬼の涙ぐましい子育て物語。


表紙を見たり、翻訳が金原瑞人氏だったりすると、児童書か?と思うが、読んでみると子どもにはわからない感覚が溢れている。中に出てくる品物や音楽、社会的な出来事など、いろんなことを経験したり、読んだりして、知識として持っている大人でなくては、この本は本当に面白いとは感じられないだろう。吸血鬼の話なのに、そういう妙に人間くさいこだわりが面白かったりするからだ。