私はテロリスト?
うちの母は異常な心配性だ。旅行などに行くとなったら大騒ぎ。海は溺れる、山は突き落とされる、スキーは骨折する、海外は飛行機が落ちる、ましてアメリカなんかに行ったら、絶対に殺されるに違いないと思っている。「遺体を捜しに行くのなんか嫌だからね」と、さんざん言われる。かわいい子には旅を“絶対させない”派なのである。
そんなわけだから、今年度前期に取った早稲田の授業(「アラブとイスラエル」)のことも黙っていた。案の定、弟か誰かに講座の内容を聞いた母が、「中東のなんだかをやってるんだって!?」と血相を変えて(顔は見えないが)電話してきた。母の中では、私はいきなりテロリストになってしまったようなのだ。
「そんな変なことやってないで、英語でもやっていればいいのに」と、アラブやイスラエルについて勉強するのは非国民で、まるで家の恥か、重大な犯罪か何かのように言う。ユダヤ系の文学を理解するためだと言うと、「そんなものは読むんじゃない」と言うのだから、開いた口がふさがらない。とんでもない偏見もいいところだ。
母にかかれば、ユダヤもユダヤ“系”も、イスラムもキリスト教も北朝鮮もみな一緒。救世主もテロリストも金正日も同様。皆、日本人を殺しに来る、怖い怖いエイリアンとなってしまうのだ。信じられるのは日本だけ、それも家の周囲のみという狭〜い世界。
他人はどうでもいいのだ。他人の子なら、「海外留学なんてすごいね」と褒る。ただ、自分と自分の子どもたちだけは、危ないことには一切関わらせたくないと思っているらしい。こうなると、もう今さら何も説明する気にならない。
ところで、ニューオーリンズのトランペッター、ジャミール・シャリフが、「上を向いて歩こう」(「スキヤキ・ソング」)を練習しているらしい。ニューオーリンズに行った時に、ストリート・ミュージシャンが「スキヤキ」を演奏してくれたが、ジャミールまで!と嬉しくなったので、歌詞をメモしておこう。
改めて歌詞を読んでみると、いい曲だなと思う。ジャミールも、日本に来て歌ってくれたら嬉しいんだけどな。というか、もう一度ニューオーリンズに行って、そこで聴いてみたいと思う。きっと、いろんな思いがこみ上げて、日本で聴くよりも胸にしみるだろう。
★「上を向いて歩こう」
作詞:永 六輔 作曲:中村 八大(1967)
上を向いて歩こう 涙がこぼれないように
思い出す春の日 一人ぼっちの夜
上を向いて歩こう にじんだ星を数えて
思い出す夏の日 一人ぼっちの夜
幸せは雲の上に 幸せは空の上に
上を向いて歩こう 涙がこぼれないように
泣きながら歩く 一人ぼっちの夜
思い出す秋の日 一人ぼっちの夜
悲しみは星のかげに 悲しみは月のかげに
上を向いて歩こう 涙がこぼれないように
泣きながら歩く 一人ぼっちの夜 一人ぼっちの夜