北風のうしろの国とは・・・

ジョージ・マクドナルドの『北風のうしろの国』をようやく読み終えた。前に書いたように、以前に原書で読み始め、あまりに暗くて、寒くて、怖いので、途中でやめていたものだが、実はそうでもないのか・・・と思っていた矢先、やはりそうだったかという感じで読み終えた。


なぜなら、「北風のうしろの国」とは、死後の国のことだからだ。天国だか地獄だかわからないが、主人公の少年ダイアモンドが「見た」という話を信じれば、天国のようなところなのだろう。


そして、はっきりと書いてあるわけではないのだが、北風は「死神」と同義であるようなのだ。とすれば、ずいぶん前からダイアモンド少年は、死神に狙われていたことになる。


それにしても、夜中に巨大な女の人の顔が現れるなんて、それがどんなに美しかろうが、とても恐ろしい。まさにホラーだ!それでも、全く恐怖を感じず、北風を信じ、会うことを楽しみにしていたダイアモンド。結局死の国に連れて行かれるとも知らず、何の疑いも抱かず、純真で穢れのない少年のまま、とうとう「北風のうしろの国」に連れて行かれてしまうのだ。


私がダイアモンドだったら、「北風、騙したな!」と怒り狂うところだが、ダイアモンドは、そこに行けることに、むしろ喜びさえ感じていた。「死ぬ」などということは、かけらさえも思っていなかった。彼にとっては、生きることも死ぬことも、たいした違いはなく、何事にも恐怖など感じていなかったのだ。もっとも、天国のように楽しいところに行けるのなら、死ぬことも怖くないのかもしれないけれど。


これはファンタジーの古典で、剣や魔法といったものには一切関係がない。宗教的な側面もあり、「死」についての哲学的な物語とも言える。また、心の美しいダイアモンドに接する人々が、それに感化されて良い人間になっていくのも、少々教訓的ではあるが、自分もそんな人間になれたら、と素直に思えて感動的でもある。