『アムニジアスコープ』

エリクソンの本を読んだ。この本は、前に「新刊」と書いたような気がするが、「新作」ではない。96年くらいに出版されたものだから、もう10年近くたっている。


エリクソンの『黒い時計の旅』は大好きで、先日も復刊されたのを喜んだばかりだけれど、今回の本を読んで、「私はエリクソンが好き」を「私はエリクソンの『黒い時計の旅』が好き」に変更しなくてはならないかな、と思った。


内容紹介にある「幻視作家」って何よ?と思いつつ、何となくわかるつもりでいたけれど、ドラッグか何かやってない?という感じの話って、どうもダメだなあ。それが「幻視」ということなのかしらん?


サンフランシスコで、周りにいる人が皆ドラッグをやっているように見えた時、あるいは、かなり確信的に絶対やってるなと感じた時、非常に恐怖を覚えた。こういう人たちが、こういう小説を書くんだろうなあなんて思ったことを思い出し、エリクソンはロス在住だし、有り得ないことではないだろうなんて、勝手に想像した。だって、やっぱり書かれていることが普通じゃないもの。


「これまで自分が関係してきた女性たちとの記憶を生々しく甦らせ」というのも曲者だ。たしかに生々しいのだが、物は言いようだなと思う。柴田氏の翻訳だから、それなりの品位を保ってはいるけれど。


で、面白くないかというとそうでもなくて、じゃ、面白いのかというとそうも言い切れず・・・、そのあたりは、柴田氏も訳者あとがきで「冗長な部分もあるが、下手に書くことはあっても、力を抜いて書くことはない」などと書いている。一応褒め言葉だ。


話の内容は、これはもう好き嫌い、性に合うかどうかの問題だと思う。こういう(どういう?)小説は、どうもうまく把握できない。というか、書き手が男であることを、ものすごく意識させられる。男の頭の中って、みんなこんななのか?と、今更のように周囲に疑惑の目を向けたくなる。