『ファンタージエン 秘密の図書館』

ラルフ・イーザウの『ファンタージエン 秘密の図書館』を読み終える。「ハリポタ4」の映画を観たせいか、どうしても比較してしまい、これは面白くないなあと思ってしまった。とはいえ、映画を観る前から読んでいたのに、全く興味がわかなかったのだから、けして「ハリポタ」のせいではない。


いろんなファンタジーがあるなかで、個人の好みもあるだろうが、私としては、あまり好みのタイプではない。ラルフ・イーザウは、「ミヒャエル・エンデの秘蔵っ子」ということで期待していたのだが、実際は、エンデには遠く及ばないだろう。


まず、ユーモアがない。ここで笑わせるつもりだな、というのはわかるのだが、全然面白くないので笑えないし、それが繰り返されると、どんどん白けていくのだ。エンデの『はてしない物語』の前の物語という着想はいいと思うが、それが逆に荷が重すぎたのでは?という印象だ。会話も退屈だし、全然面白くなかった。期待はずれ。


ところで日にちを遡ってしまうが、ちょっと前に読んだ、ビアトリクス・ポター『妖精のキャラバン』 は、面白かった。これはまた全然違うタイプのファンタジーだが、「ピーター・ラビット」の世界を思い浮かべてもらうとわかりやすいだろう。


ネズミやヤマネや白イタチなんかが、「ヘアピンはお使いになるの?」とか、「あたくし、お帽子のふちかがりをしたりして夜が遅いものですから」なんていうセリフを言うのが、何ともおかしい。これは翻訳が合っているのだと思うけれど。


ポターのファンタジーは、「ピーター・ラビット」もそうだが、単にかわいらしい話というわけではない。良くも悪くも厳格なポターの考えと、イギリスの湖水地方の自然を守ろうとする姿勢が表現されたものだから、時にはあっと思うこともある。案外内容の深いファンタジーなのだ。


ちなみに、この本は長編として書かれてはいるが、実際はいくつもの話を繋げた作りになっている。あれやこれやの話を、登場人物(動物)たちがそれぞれの知っている物語として、ほかの登場人物(動物)に話して聞かせるのだ。だから、本体は動物のサーカスのキャラバンの話なのだが、いろいろな話が混じっていて、また楽しい。