<ローワン・シリーズ>読破

読破と書くほどのものでもないが、エミリー・ロッダの<ローワン・シリーズ>を全部読み終えた。アーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』の返却も迫っているので、そちらを先に読まないといけないと思いつつ、どうしても面白いほうに行ってしまう。ランサムも面白いんだと思うが、同じ時期に二つ並んでいたら、そりゃもう<ローワン>です。


<ローワン>はたしかに子供向けであり、小難しい本が好きな人は、きっと馬鹿にしているだろうが、エミリー・ロッダはとても上手い作家だと思う。あまり無駄なことは書いていないし、ストーリー展開もスピーディで良い。


<ローワン>のシリーズは一話完結だが、やはり繋がりはあるので、できれば最初から読んだほうがいい。どの話にも謎解きが出てくるので、どういう意味なんだろう?と考えをめぐらせ、あれこれ想像するのも楽しい。その謎を、ローワンがどうやって解決していくのか。それがわくわくするのだ。寓意がないとは言えないが、押し付けがましくないところがいい。


ファンタジーの良いところは、何も不思議な世界とか出来事とか、そういう作り話の部分ばかりではない。主人公たち(あるいはヒーローたち)が、困難を乗り越えていくために戦わなければならないのは、竜や怪物ばかりではないのだ。ほとんどは、人間(または人間に似たもの)相手の事柄なのだ。そしてその中から、勇気や優しさや、善悪の観念を学んでいく。


実際の人間社会には存在しないかもしれない理想の観念が、ファンタジーの中にはある。ファンタジーはただの作り話と思っている人も多いだろうが、逆の意味で確かにそうだ。実際の世の中のほうが、きれいな仮面をかぶった邪悪な怪物が多いのだから。


<ローワン>は、けして強いヒーローではない。しかし、難問を解決して村人たち、ひいては世界を救っていく人物が、どこにでもいそうな弱虫の男の子だというのが、非常に親しみがあっていいのだろうと思う。


ちなみにエミリー・ロッダは、ジェニファー・ロウという名前で、大人向けのミステリも書いている。⇒『不吉な休暇』/ジェニファー・ロウ (著), 喜多 元子 (翻訳)