『琥珀捕り』&『直筆商の哀しみ』

昨日、図書館に返却しなければならなかったので、キアラン・カーソン『琥珀捕り』 を一気に読んだ。とはいえ、アメリカ南部のハリケーンのことに気をとられていて、テレビでニュースをやらないかと気にしながらだったので、あまりはまれなかった。延長してもよかったのだが、あまり長引かせても・・・と、深く味わう暇もなく、慌しく読んでしまった。


柴田元幸氏も絶賛の本なのだが、たしかに通が好みそうだなという感じ。ふと気づくと、物語にはまって一心に読んでいたりするのだが、カーソンはもともと詩人だから、短い言葉を並べるのが得意なのだろうと思うような名詞の羅列とかがちょっとうざい。


そういうところは飛ばし読みしたりしてしまったのだが、本当は名詞の羅列も意味のあることなのだろう。韻を踏んでいると思われる部分もたくさんあり、原文では、非常に高度な技を駆使した小説なのではないかと思った。日本語でもそれが感じられるのだから、訳すほうもひと苦労だったに違いない(翻訳そのものはよかった)。しかし時間があまりなくて、夢中になるほど入り込めなかったのが残念。


主に、世界中を飛び回る冒険王ジャックのほら話なのだが、それぞれが単なるおとぎ話ではなく、そこから派生する話が、百科事典でも調べたような深みのある、また「ほら話」なのに真実味のありそうな話なのだ。実際に、巻末にある参考文献の数を見て驚く。これだけの書物を読み、物語をつくりあげた手腕はすごい・・・のだろう、たぶん。


もう1冊、ゼイディ・スミスの 『直筆商の哀しみ』 は、とても分厚い本で、はなから読みきれないとあきらめていたのだが、読み始めてみて、これは厚さには関係なく読みきれない小説だと感じ、さっさと読むのをやめた。


ゼイディ・スミスは、やはり通好みというのだろうか、その筋には評価の高い作家だが、私の好みではない。文体が(日本語で読んだ場合は作家のせいだけとは言えないが)好みじゃないのだろうと思う。というか、文章が上手い作家とは思えないのだ。全部読んだわけではないから、あまり言えないが、この文章でこの分厚さはしんどいという感じだったから、すんなり諦めた。もっと気持ちに余裕があったら読めたかもしれないが、あとでまた挑戦してみよう。


最近アポロ13号は、私が借りてきた 『新訳・アンクル・トムの小屋』 を読んでいる。参考書として、バーダマン先生の 『ふたつのアメリカ史―南部人から見た真実のアメリカ』 も読んでいる。これは私にとっても、非常に喜ばしいことだ。これで、やっと南部の話ができるというものだ。とはいえこの2冊、私はまだ読んでいないので、アポロ13号のほうが、先に南部について博識になってしまいそうなんだけど。


南部といえば、ハリケーン。いまだ、まゆみさんに連絡をとる方法がわからない。日本のテレビでは毎回同じ映像を映したりしていて、何も得ることができない。ネットの New York Times や USA TODAY では、写真やビデオ、被害地域の地図まで載っているので、どこがどれくらいの被害なのか、多少の見当はついたものの、安否を確かめる方法まではわからない。


一人ぼっちというわけじゃないだろうが、単身海外で暮らしていて、あんな大災害に遭うなんて、どんなに心細いだろうと思うと、何もしてあげることができないのが、とても情けない。でも、気持ちばかりあせっても、どうにもしようがない。