『デセプション・ポイント』

ダン・ブラウンの『デセプション・ポイント』を読了。確かに、「徹夜本」という評判どおりのページターナーだ。もっとも、この作品には「地球外生命体」というモチーフが使われているため、個人的に好みのSFチックな状況設定ではある。それを差し引いたとしても、スピーディな展開で、どんどん先に進ませる手腕は、認めなければならないだろうと思う。でもこういう本は、何も考えなくていいので楽ちんだ。


短い章の繋がりで、場面展開がめまぐるしい。そのため、二人のヒロインの状況が、同時に把握できるようになっている。次はどうなるのか?という好奇心を掻き立たせる各章の切り方は、やはりシドニー・シェルダンと同じだと思う。


そういう書き方は、他のミステリ作家にもたくさんいるが、筆頭に浮かぶのは、やっぱりシェルダンだろう。最初に 『ゲームの達人』*1 を読んだときには、今回ダン・ブラウンの作品に感じたのと同じわくわく感があったもの。シェルダンも元脚本家だから、そういった場面展開は得意だろうし。


実はこの話は、「地球外生命体」などには全然関係ない話と言ってしまってもいいと思うが、最後まで期待を持たされる。しかし、どうしても腑に落ちない箇所がひとつ。あまり重要でない登場人物二人が、いつのまにか消えているのだ。何の説明もなく。海の真っ只中でのことだから、ひとりでに消えるわけがない。あの二人は一体どうしちゃったのだろう?「地球外生命体」よりも、そちらのほうが謎。