いいぞ、エドガー・ミント!

エドガー・ミント、タイプを打つ。』を読了。これは、読みながら「いいぞ、エドガー・ミント!」と声援を送りたくなるような本。7歳で死にかけて、その後辛いことがたくさん降りかかってくるにも関わらず、また、まだほんの幼い子どもであるにも関わらず、飄々と生きていくエドガー。その姿は、どこかけなげで、またユーモラスでもあり、なにかしみじみとした感じがある。

偉い人だとか、大物だとか、そんなことには一切関係ない世界。いじめられたりすれば、それなりに曲がりくねっていくのだけれど、エドガーの本質には、しっかりとした善なる心があって、だからこそ、親や友だちが死んだりすると、自分のせいではないかと苦しみ、ひたすらタイプを打つことで、そういった気持ちに折り合いをつけていく。

昨今、平気で人の心を傷つける人間がいることに腹立たしさを覚えているけれど、エドガーの姿を見ていると(読んでいると)、何も立派なことをしなくたっていい、まっとうに生きてさえいれば、と思う。

「僕にとってなによりすばらしいこと、それはこの13年間(郵便配達人の妻を母として一緒に暮らした年月)にとりたてて言うほどのことがないということだ」

人を傷つけたり、押しのけたりして成功するよりも、平穏無事に何事もなく生きていくことの幸せを実感させてくれる言葉だ。