総合英語(7)&アメリカ南部映画祭(5)

梅雨の時期にしては、さわやかな天気で、風が心地よい。こういう日は、早稲田まで歩いていくのも苦ではない。

<今日のポイント>

アーカイブイノベーションインセンティブ、コラボレーションなどなど、巷にあふれる外来語(loan word)の多くは英語から来ている。つまり、英語を勉強するということは、

教養であると同時に日本語の勉強

であるとも言えるのだ。外来語になって、本来の意味から微妙に外れてしまう場合もあるが、英語をしっかり勉強していれば、日本語の中でも、ちゃんとした意味で使うことができるというわけだ。

ところで、講師の横山先生は、ミシシッピ州立大学の大学院を卒業されている。場所的にはニューオーリンズの近くだとか。なので、「アメリカ南部映画祭」のことを話したところ、「へええ、難しそうだねぇ」とのコメント。文学部の先生ではないので、映画や文学にはあまり興味がないようだ。せっかく南部の詳しい話が聞けるかと思っていたのだが、「南部の料理って、美味しいですか?」などと、馬鹿な質問だけで終わってしまった。(^^;


アメリカ南部映画祭(5)

『Glory』(邦題『グローリー』 1989年)
監督:エドワード・ズウィック
出演:マシュー・ブロデリックデンゼル・ワシントン、ケアリー・エルウェス、モーガン・フリーマン

南北戦争のさなか、アメリカ史上初めて、黒人部隊が組織された。第54連隊である。指揮者は北軍の若き白人将校で、集まった黒人兵士はほとんどが南部からの脱走奴隷だった。彼らは厳しい訓練に耐え、誇りも高く、栄光を手にするべく、いよいよ難攻不落の南軍の砦へと向かう。

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南北戦争が勃発し、北軍将校ロバート・グールド・ショー大佐(マシュー・ブロデリック)は黒人志願兵によって結成された第54連隊を指揮することになった。若輩のショーは、トリップ(デンゼル・ワシントン)やジョン(モーガン・フリーマン)など奴隷解放を願う黒人たちの士気に支えられ、やがて54連隊は1863年7月18日のフォート・ワグナーの戦いに臨んで行く……。

アメリカ史上初の黒人部隊とそれを率いる白人将校のきずなと壮烈な戦いを描いた戦争スペクタクル映画の傑作。青春映画『きのうの夜は…』でデビューしたエドワード・ズウィック監督によるリアルでエモーショナルに満ちた演出が出色で、以後彼は『レジェンド・オブ・フォール』『ラストサムライ』など時代の変遷にのみ込まれていく人間の凱歌を好んで題材にするようになる。クライマックスの戦闘シーンは、フレディ・フランシスの撮影とジェームズ・ホーナーによる音楽との見事な融合も功を奏し、観る者すべての感情を揺さぶらせること必至の名シーンであった。アカデミー賞では助演男優(D・ワシントン)・撮影・録音賞を受賞。(的田也寸志

南北戦争における黒人の実態を掴んでいる映画で、歴史的に誠実。ほとんど史実に基づいた話だが、上記の下線部分だけが史実ではない。第54連隊に入隊した黒人は、もともと北部の奴隷ではない黒人である。

この映画が北軍を描いているとすれば、『風と共に去りぬ』は南軍の映画だが、奴隷を軽視していると言われている。南部では、奴隷を戦わせることはしなかったため、他の肉体労働をさせていた。黒人奴隷を家族として扱っている南部の白人にも、「一緒に戦う」という意識はなかった。

舞台となるフォート・ワグナーは、南北戦争が始まった土地。ここで初めて黒人部隊が戦い、その50%が戦死したという悲惨な結果になった。ロバート・グールド・ショー大佐も、ここで戦死。

個人的に、南北戦争にはたくさんの疑問を持っているのだが(というより、不勉強でよく知らないと言ったほうがいいかも)、この映画を観て、少し理解できたような気がする。とはいえ、「奴隷解放」という大義名分のほかに、「本当は何のために戦ったのか」という疑問はいまだに解消されない。

北部でも、黒人奴隷を開放するために自分の命を落とすことなど考えてもいなかった人々もいて、そのため、徴兵拒否もあったようだ。たしかに普通はそう思うだろうなと思う。部隊が100%黒人だったら認められなかったという事実もあって、「奴隷解放」を掲げながらも、根本的に人種差別をしているわけだし。

歴史的な事実はともあれ、この映画を観ていて、ずっと胸が痛かった。差別されている黒人たちだが、彼らの持つ誇りは素晴らしく、またショー大佐をはじめとする、第54連隊の白人将校たちとの絆にも熱いものがあった。戦いのシーンは凄惨で、主要な登場人物が次々に戦死していく様は、目をそむけたくなるほどだった。

ショー大佐を演じたマシュー・ブロデリックは、最初、こんなひ弱そうなのが指揮官でだいじょうぶなのか?という感じだったが、次第に指揮官として堂々たる人物になっていく過程が見えて、非常に良かった。決死の覚悟で黒人たちに混じって戦う姿は、ちょっと可愛らしい容貌と相まって、逆に哀れを誘う。ここでも、彼は何のために戦っていたんだろう?何のために死ななければならなかったのだろう?という思いがよぎった。

南北戦争に限らず、どんな戦争だって悲惨なのだと思うが、南北戦争ほど本当の理由の見えない戦争はないのでは?と思う。ただ私が無知なだけなのかもしれないが、今回の担当の南部出身のバーダマン先生ですら、南北戦争の真の理由については、はっきりした答えを述べていない。

今回は、北軍の軍服を着て、南軍が使用したマスケット銃を持ったコスプレ(?)の人たちが来ていて、映画のあとに、銃の玉のこめ方などを嬉々として説明していた。それはたしかに興味深い資料ではあるけれど、バーダマン先生が「この戦争は悲惨である」と解説している場で、あの楽しそうな雰囲気は何なのだろう?と思った。戦争オタクなのか、武器オタクなのか、今の防衛庁長官みたいな人なんだろうか?ちょっと異常かも?(^^;

<参考資料>
Past Imperfect: History According to the Movies (Henry Holt Reference Book)/Mark C. Carnes (著), Ted Mico (著), John Miller-Monzon (著), David Rubel (著)
ペーパーバック: 320 p ; 出版社: Henry Holt & Co ; ISBN: 0805037608 ; Reprint 版 (1996/11/01)
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In our increasingly visual culture, a growing amount of what we learn about history comes from the movies. This unusual and cornucopian book draws on the knowledge of 60 experts who examine the historical accuracy of a splendid array of classic movies such as Julius Caesar, Aguirre the Wrath of God, Mutiny on the Bounty, The Last of the Mohicans, Gallipoli, and Gandhi. They reveal what each movie has done right and wrong in portraying the complex threads of the stories as known to the world's most qualified scholars. Highly Recommended.

●次回の作品
『O Brother, Where Art Thou?』(邦題『オー・ブラザー』 2000年)